介護事業者がクラウド会計を導入するメリットと、freee・マネーフォワードの選び方、導入後の経理フロー整備のポイントを解説します。
介護事業の経理が複雑な理由
介護事業の経理は、一般的な業種に比べて複雑です。主な理由は以下のとおりです。
- 介護報酬・自己負担・加算の3本立て:売上は、介護報酬(国保連請求分)・利用者負担・各種加算で構成されます。それぞれ入金タイミングが異なります。
- 入金まで約2か月のタイムラグ:サービス提供から入金まで2か月かかるため、未収金管理が必要です。
- 人件費比率が高い:人件費が売上の60〜70%を占めることも珍しくなく、給与計算・社会保険料の管理が経理の大部分を占めます。
- 複数サービス種別の管理:複数の介護サービスを運営している場合、サービス別の収益管理が求められます。
このような複雑さを、クラウド会計を活用することで整理することができます。
クラウド会計導入のメリット
記帳の自動化
freee・マネーフォワードはどちらも、銀行口座・クレジットカードの明細を自動取込する機能があります。日々の取引の大部分が自動で仕訳候補として表示されるため、手入力の手間が大幅に減ります。
リアルタイムで財務状況を確認できる
パソコン・スマートフォンからいつでも財務状況を確認できます。月末を待たずに、売上・費用の状況を把握できます。
月次決算の早期化につながる
自動取込・自動仕訳の仕組みが整えば、月次処理のスピードが上がります。翌月10日以内の試算表完成が現実的になります。
複数拠点・サービス別の管理が容易に
部門管理・事業所別の損益管理がしやすくなり、どのサービス・拠点が黒字・赤字かを見やすくなります。
freeeとマネーフォワードの違い
どちらを選ぶかは悩ましい問題です。簡単に比較します。
freee
- 操作画面がわかりやすく、会計の知識が少なくても使いやすい
- 個人事業主・小規模法人向けの機能が充実
- 介護事業でも導入実績が多い
マネーフォワード クラウド会計
- 会計・給与・請求書など周辺ツールとの連携が強力
- 複数拠点・組織規模が大きい事業者に向いている
- 既存の会計ソフトからの移行がしやすい場合が多い
どちらも無料トライアルがあります。実際に試した上で選ぶことをおすすめします。
導入の進め方
1. 現状の経理フローを整理する
どのような取引が発生しているか、現在どんな方法で処理しているかを整理します。銀行口座・クレジットカードの本数、給与計算ソフトとの連携有無も確認します。
2. 初期設定・口座連携
法人情報の設定・銀行口座やクレジットカードの連携を行います。主要な取引に対して仕訳ルールを設定します。
3. 介護報酬の未収金管理の設定
国保連請求額を売上計上し、入金時に消込む流れを設定します。このステップは介護事業特有の処理なので、初回は専門家のサポートを受けることをおすすめします。
4. 試運転・定着
1か月は並行運用し、問題がないことを確認してから本格運用に移ります。運用ルールをドキュメント化しておくと、担当者が変わった際にも引き継ぎがスムーズです。
まとめ
クラウド会計は、介護事業の複雑な経理を整理し、月次決算の早期化・バックオフィスの仕組み化につながる有力なツールです。
ただし、「ツールを入れれば自動的に整う」わけではありません。介護事業特有の未収金管理・加算処理・サービス別損益管理などを正しく設定することが重要です。
導入の際には、介護事業の会計に詳しい専門家と一緒に進めることをおすすめします。
関連サービス
執筆者
萩原裕司
公認会計士・税理士