融資審査で金融機関が見るのは、決算書の利益だけではありません。介護施設の場合、稼働率の安定性や資金繰りの実態も見られます。融資審査で確認される数字と、通りやすくするための日頃の準備を、金融機関の視点から実務目線で整理します。
融資審査で見られるのは「利益・返済力・稼働率の安定」
介護施設が融資審査で見られる数字は、決算書の最終利益だけではありません。金融機関が確認するのは大きく分けて、本業の利益(営業利益)・借入の返済力(債務償還年数)・自己資本・稼働率の安定性・人件費率の5つです。要するに「本業でしっかり稼げていて、借りたお金を無理なく返せるか」を、介護事業の特性を踏まえて見ています。
決算書の数字は過去の結果ですが、金融機関はそこから将来の返済力を読み取ろうとします。だからこそ、利益が出ているかだけでなく、その利益が安定して続きそうか——介護の場合は稼働率が安定しているか——まで見られます。
金融機関が融資先をどう見ているかの全体像は銀行が介護施設を見るポイントで整理しています。本記事は、そのなかでも審査で具体的に確認される数字に絞ります。
なぜ「利益」だけでなく「数字の安定」が見られるのか
融資は、貸したお金が返ってくることが前提です。金融機関にとって最大の関心は返済力で、その源泉が本業の利益です。だから単年の最終利益より、本業でどれだけ稼げているかを示す営業利益が重視されます。
介護事業で特に見られるのが稼働率です。介護報酬は利用者数に連動するため、稼働率が崩れれば売上の土台が崩れます。利益が出ていても、稼働率が乱高下していれば「来期も同じ利益が続くとは限らない」と見られます。逆に、稼働率が安定して推移していれば、利益の継続性に説得力が出ます。金融機関は数字の水準だけでなく、安定性まで見ているのです。
よくある課題
最新の試算表をすぐ出せない
融資の相談をしても、月次決算が遅れていて直近の数字が出せないケースです。これだけで「数字の管理が弱い」と見られ、印象を損ねます。
資金繰り表がない
返済の原資となる資金の流れを示す資金繰り表がなく、金融機関に将来の資金状況を説明できない状態です。
稼働率や人件費率を整理していない
決算書は出せても、稼働率や人件費率の推移を整理しておらず、収益構造を自分の言葉で説明できないケースです。
実務で起きる問題
ある介護法人が、新規事業所の開設資金を借り入れようと金融機関に相談したときの例です。決算書では黒字でしたが、月次決算が2か月遅れていて、相談時点で出せたのは前々月までの試算表でした。さらに稼働率の推移を聞かれても整理した資料がなく、口頭で「だいたい9割くらい」としか答えられませんでした。
金融機関の担当者は数字を高く評価しきれず、追加資料を求められて手続きが長引きました。そこで月次決算を早期化し、直近の試算表・資金繰り表・事業所別の稼働率推移を一式そろえて再度提示したところ、収益構造と返済力が明確に伝わり、審査がスムーズに進みました。同じ事業内容でも、数字をすぐ出せる状態かどうかで金融機関の受け止めは大きく変わります。利益の中身を自分の言葉で説明できたことが、信頼につながりました。
改善方法
ステップ1:月次決算を早期化し、最新の試算表を出せる状態にする
融資の相談時に直近の数字をすぐ示せることが、管理体制への信頼につながります。月次決算の早期化が前提になります。
ステップ2:資金繰り表を整える
返済原資となる資金の流れを示す資金繰り表を用意します。将来の資金状況を金融機関に説明できる状態を作ります。
ステップ3:営業利益と債務償還年数を把握する
本業の利益(営業利益)と、借入を利益で何年で返せるか(債務償還年数)を自分で把握しておきます。金融機関が見る数字を、先に自分が理解しておくことが大切です。
ステップ4:稼働率・人件費率の推移を整理する
過去数か月から1年程度の稼働率と人件費率の推移を整理し、収益構造を説明できるようにします。安定性を数字で示せると説得力が増します。
ステップ5:赤字や変動の理由を説明できるようにする
赤字や数字の変動がある場合は、その理由と改善の見通しを数字で説明できるよう準備します。説明できる赤字と、できない赤字では評価が変わります。
関連サービス
資金調達支援では、融資審査で金融機関が見る営業利益・債務償還年数・稼働率の推移を整理し、相談時にすぐ出せる試算表・資金繰り表を含む資料一式を整えます。決算書の数字を自分の言葉で説明できる状態を作り、収益構造と返済力が金融機関に正しく伝わるよう支援します。日頃の月次管理から融資相談までを一貫して支えます。
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よくある質問
執筆者
萩原裕司
公認会計士・税理士