介護経営

介護施設の経営計画の作り方|数字に落とせる計画にする手順

介護施設の経営計画は、立派な文章を作ることが目的ではありません。稼働率・人件費・加算といった現場の数字に落とし込み、毎月の予実管理で使える計画にする手順を、実務目線で解説します。計画と月次管理をつなぐ考え方が中心です。

経営計画は「数字に落とせて、毎月使える」ことが条件

介護施設の経営計画というと、立派な文章や中長期のビジョンを思い浮かべるかもしれません。しかし実務で役に立つ経営計画の条件は、現場の数字に落とし込めていて、毎月の実績と比べられることです。

結論として、作る順序はシンプルです。①稼働率の前提を置く→②稼働率に連動する介護報酬・加算を収入として見積もる→③人員配置から人件費を見積もる→④その他の費用を加える→⑤これらを月次に分解する。この流れで作れば、計画は毎月の予実管理にそのまま使えます。逆に、年間の総額だけで作った計画や、文章中心の計画は、立てた瞬間に棚へ置かれて終わります。計画は「作ること」ではなく「毎月使うこと」を目的に設計します。

なぜ計画を数字に落とす必要があるのか

介護施設の経営は、稼働率・人件費・加算という限られた変数で大きく決まります。だからこそ、計画もこの変数で組み立てれば、現実と比べやすくなります。

「利用者を増やす」「経費を見直す」といった言葉だけの計画では、達成できたかどうかが判断できません。一方、「4月の稼働率を92%、人件費率を70%以内に」という数字の計画なら、月末に実績と比べてズレが一目で分かります。数字に落とすことは、計画を検証可能にするということです。検証できない計画は、改善にもつながりません。

よくある課題

年間総額だけで作っている

「今年の売上目標は◯◯万円」という年間総額だけの計画は、月次に分解されていないため、毎月の実績と比べられません。結果として、年度末に「届かなかった」と振り返るだけになります。

稼働率の前提が曖昧

介護施設の収入は稼働率でほぼ決まるのに、計画の稼働率前提が「だいたい埋まる想定」と曖昧なケースがあります。土台が曖昧だと、その上に積む収入計画もぶれます。

作って終わり、振り返らない

計画を立てること自体が目的化し、立てた後に実績と突き合わせない施設は多いです。計画は月次で使われて初めて意味を持ちます。

実務で起きる問題

ある介護施設の例です。年度初めに「年間売上◯◯万円、利益◯◯万円」という経営計画を作っていました。立派な資料でしたが、月次には分解されておらず、毎月の経営会議でも参照されていませんでした。

下半期に入って資金繰りが厳しくなり、慌てて確認したところ、上半期の稼働率が計画前提を下回り続けていたことが分かりました。計画を月次に分解していれば、4月・5月の時点で「前提より稼働率が低い」と気づけたはずです。年間総額の計画では、ズレが累積してから初めて表面化します

この施設では翌年度から、計画を月次に分解し、毎月の経営会議で「計画の稼働率・収支」と「実績」を並べる運用に変えました。ズレが出た月にその場で原因を確認できるようになり、年度末に慌てる状況がなくなりました。

改善方法

ステップ1:稼働率の前提を月ごとに置く

各月の目標稼働率を置きます。新規開設なら立ち上がりカーブを、既存施設なら季節要因(年末年始の入院増など)を踏まえて、現実的な数字にします。ここが計画の土台です。

ステップ2:収入を稼働率から積み上げる

目標稼働率に基づいて、介護報酬・加算の収入を見積もります。加算は取得予定のものを根拠とともに織り込み、希望的観測で積まないようにします。

ステップ3:人件費を人員配置から見積もる

必要な人員配置から人件費を見積もります。介護施設は人件費の比重が大きいため、ここの精度が計画全体の精度を左右します。採用予定・賞与の支給月も月次に反映します。

ステップ4:月次に分解し、予実管理とつなぐ

完成した年間計画を12か月に分解し、毎月の実績と並べられる様式にします。経営会議で計画と実績を突き合わせ、ズレの理由を確認する。この予実管理の運用とセットにして、初めて計画が経営に効いてきます。

関連サービス

経営会議資料の作成支援では、稼働率・収入・人件費に落とした月次の経営計画を整え、毎月の実績と並べて見られる予実管理の様式までを支援します。計画を立てて終わりにせず、経営会議で計画と実績を突き合わせ、ズレに早く手を打てる運用をつくります。

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よくある質問

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執筆者

萩原裕司

公認会計士・税理士