介護施設の月次資料は、試算表だけでは不十分です。稼働率・人件費・加算・資金繰りなど、経営判断に使える月次資料に入れるべき項目を解説します。
月次資料がない施設の共通点
試算表は毎月届いている。しかし、経営状態を月次で把握できていない。こうした施設に共通するのは、「月次資料がない」という点です。
試算表は経営の全体像を把握するには不十分です。介護施設の経営を月次で管理するには、稼働率・人件費率・加算・資金繰りを一覧できる管理資料が必要です。
月次資料が必要な理由
介護施設の経営では、以下の3つの理由から月次資料が必要です。
1. 変動の原因を切り分けるため
売上が前月より落ちたとき、原因が稼働率なのか、加算の変動なのかを切り分けるには、それぞれの数字を別々に確認できる資料が必要です。
2. 問題に早く気づくため
試算表が翌月末にしか届かない環境では、問題に気づくのが遅れます。月次資料を翌月10〜15日に確認できる体制があれば、対応が1か月以上早まります。
3. 経営判断の根拠を持つため
採用・設備投資・価格改定などの判断を数字の根拠を持って行うには、月次の実績データが必要です。感覚での判断から脱するための基盤が月次資料です。
試算表だけでは足りない理由
試算表には「売上高・人件費・利益」などの科目別金額が並んでいますが、以下が読み取れません。
- 当月の稼働率(何%だったか)
- 人件費率(人件費÷売上)が適正かどうか
- 加算の算定状況に変化があったか
- 向こう2か月の資金繰りに問題がないか
これらを確認するには、試算表とは別に経営指標をまとめた管理資料が必要です。
月次資料に入れるべき項目
必須の4項目
| 項目 | 確認内容 | |---|---| | 稼働率 | 当月実績・前月比・前年同月比 | | 人件費率 | 人件費÷売上(%)・前月比 | | 現預金残高 | 月末残高・前月比 | | 加算請求額 | 当月の加算請求合計・前月比 |
追加で入れると有効な項目
- 入退去状況(当月入居・退去人数)
- 利益推移(直近6か月)
- 資金繰り見込み(向こう2〜3か月)
- 前年同月比の売上・利益比較
介護施設で特に重要な数字
稼働率と人件費率のセット確認
稼働率が下がると売上が減り、人件費率が上昇します。この連動を月次で確認しないと、「稼働率が落ちたが人件費は変わっていない」という状態が続く可能性があります。
加算請求額の前月比確認
処遇改善加算・各種サービス加算は、算定要件の変化や手続きの漏れで金額が変動します。月次で前月比を確認することで、加算の取りこぼしに気づきやすくなります。
向こう2か月の資金繰り見込み
介護報酬の入金は約2か月後のため、今月の稼働率が向こう2か月の資金繰りに影響します。稼働率と合わせて資金繰り見込みを月次で確認することが必要です。
続けやすい資料設計
月次資料は「作れる」より「続けられる」ことが重要です。以下の3点を意識して設計してください。
シンプルな項目数から始める
最初は稼働率・人件費率・現預金残高・加算の4項目だけで構いません。項目を増やすのは運用が安定してからで十分です。
作成者と完成日を固定する
毎月誰が資料を作るか、何日までに完成させるかを決めます。翌月10〜15日を目安にすることで、月次の経営確認のサイクルが回ります。
確認の場を決める
月次資料は経営会議(または管理者との打ち合わせ)で必ず使うルールにします。「作るだけで使われない」状態を防ぐには、資料を使う場を先に決めることが有効です。
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よくある質問
執筆者
萩原裕司
公認会計士・税理士