介護施設の経営会議では、試算表だけでなく、稼働率・人件費・加算・資金繰りなどの経営数字を確認することが重要です。経営判断に使える数字の見方を解説します。
試算表を持参するだけの経営会議では判断できない
「試算表を確認して、大きな問題がなければ終わり」という経営会議では、介護施設の経営判断はできません。
試算表は、科目別の収支が記録された集計表です。その数字を見ても、「稼働率が下がっているのか」「人件費が上がっているのか」「加算の算定に漏れがあるのか」は読み取れません。経営会議で使える数字とは、こうした経営判断の根拠になる指標です。
試算表だけでは経営判断に使いにくい理由
試算表には「売上高」「人件費」「利益」などの金額が並んでいますが、以下のような問いには答えられません。
- 今月の売上が下がったのは稼働率の問題か、加算の問題か
- 人件費が増えたのは適正採用によるものか、過剰なのか
- 資金繰りは向こう2か月問題がないか
- 先月と比べて何が変わったか
介護事業では、売上の変動が稼働率・加算・入退去のどれに起因するかによって対応策が全く変わります。試算表の数字だけでは、原因の切り分けができないのです。
経営会議で見るべき数字
1. 稼働率(前月・前年同月比)
当月の稼働率と、前月・前年同月の比較を確認します。下がっている場合は入退去の動きと照らし合わせ、原因を把握します。
2. 人件費率(人件費÷売上)
月次で人件費率を計算します。稼働率が変動している月は、人件費率が連動して動いていないか確認します。稼働率が下がっているのに人件費が変わっていなければ、人件費率が上昇しています。
3. 加算請求額の確認
処遇改善加算・各種サービス加算の請求額を前月と比較します。算定要件の変化があった場合や、手続きの漏れがある場合は、この数字に変化が出ます。
4. 現預金残高と向こう2か月の資金繰り見込み
当月末の現預金残高と、向こう2か月の入金・支出の見込みを確認します。介護報酬の入金は約2か月後のため、資金繰りは先を見て管理することが必要です。
5. 利益推移(月次)
単月の利益だけでなく、直近3〜6か月の推移を確認します。推移で見ることで、季節変動と構造的な問題を区別できます。
稼働率・人件費・加算・資金繰りの関係
これら4つの指標は、独立して存在するのではなく互いに影響しあっています。
- 稼働率が下がる → 売上が落ちる → 人件費率が上昇する
- 加算の算定要件が変わる → 売上に影響する → 資金繰りに影響する
- 人件費が増える → 資金繰りが厳しくなる
4つをバラバラに見ていると、こうした連動を把握できません。1枚の管理資料にまとめて、月次で一覧で確認することが有効です。
管理資料を整えるメリット
問題の早期把握
稼働率が前月比で数ポイント落ちているときに気づければ、当月中に相談員への情報共有や入居促進の動きが取れます。試算表が届く翌月末まで待っていては、対応が1か月遅れます。
意思決定の根拠ができる
採用・設備投資・価格見直しなどの判断に数字の根拠が持てます。感覚で判断する状態から脱することができます。
外部との情報共有が容易になる
税理士・会計士・金融機関との打ち合わせで、管理資料があれば具体的な議論ができます。試算表しかない場合と比べ、アドバイスの質が変わります。
月次会議の進め方
月次の経営会議を効果的に進めるために、以下の流れを推奨しています。
- 前月からの変化を確認する(稼働率・人件費率・加算)
- 変化の原因を確認する(入退去・採用退職・加算要件)
- 資金繰りの見込みを確認する(向こう2か月)
- 翌月に向けて何をするかを決める
所要時間は30〜60分が目安です。数字を見るだけでなく、「何がどう変わったか」「なぜか」「来月どうするか」の3点を確認することで、会議が経営判断の場になります。
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よくある質問
執筆者
萩原裕司
公認会計士・税理士