加算の算定漏れは、本来受け取れるはずの収益を毎月静かに取りこぼす損失です。要件は満たしているのに届出をしていない、算定できる利用者に付けていないなど、漏れが起きる典型パターンと、月次で気づくための管理の形を整理します。
加算の算定漏れは「気づけない損失」
加算の算定漏れとは、要件を満たしているのに、本来受け取れるはずの加算を算定できていない状態を指します。最初に押さえるべき結論は、この損失は減算(ペナルティ)と違って表面化せず、気づかないまま毎月静かに収益を取りこぼしてしまうという点です。
減算は行政の指摘や返還で表面化するため、嫌でも気づきます。一方、算定漏れは誰も指摘してくれません。受け取れなかった収益は試算表にも請求明細にもマイナスとして出ないため、数字を見ているだけでは絶対に分からないのです。これが算定漏れの怖さです。本来なら毎月入っていたはずの加算が、要件を満たしているにもかかわらず、何年も抜け続けることすらあります。
加算管理でよくあるミスの全体像は加算管理でよくあるミスで整理しています。本記事は、その中でも特に発見が難しい「算定漏れ」に絞って見ていきます。
なぜ算定漏れは見過ごされるのか
会計や請求の数字は、「実際に起きたこと」しか映しません。算定した加算は売上に乗りますが、算定し損ねた加算は、どこにも記録されないのです。存在しなかった収益を後から数字で発見することはできません。
さらに、加算は要件が細かく、改定のたびに新設・変更されます。現場の担当者が日々の請求業務をこなす中で、「この利用者はこの加算を算定できるはず」という判断まで完璧に行うのは簡単ではありません。届出のタイミング、利用者ごとの該当判定、改定への追随——どこか一つでも抜ければ、そこが算定漏れになります。
算定漏れが起きやすい典型パターン
要件は満たしているが届出をしていない
職員配置や体制の要件はクリアしているのに、自治体への届出をしておらず、算定できる状態にあることに気づいていないケースです。
算定できる利用者に付け忘れている
加算は届出済みでも、対象となる利用者一人ひとりに正しく算定できているとは限りません。新規利用者の受け入れ時に設定が漏れる、状態変化で算定可能になったのに反映されない、といった抜けが起きます。
改定で取れるようになった加算を見逃している
報酬改定で新設・緩和された加算を、現場が把握しきれず従来どおりの算定を続けるパターンです。改定は「今まで取れなかった加算が取れる」機会でもあるのに、それを取りこぼします。
上位区分に上げられるのに据え置いている
要件を整えれば上位区分を算定できるのに、「以前からこの区分だから」と見直されないまま据え置かれているケースです。
実務で起きる問題
ある住宅型有料老人ホームの例です。請求業務は長年同じ担当者が回しており、大きなミスもなく安定していました。しかし、過去の報酬改定で新設された加算のうち、自施設が要件を満たしているものが一つ、算定されないまま放置されていました。
きっかけは、加算の算定状況を要件と突き合わせて棚卸ししたことでした。「要件は満たしているのに届出していない加算がある」と判明し、届出後は毎月の収益が積み上がるようになりました。減算が一件もなかったため誰も問題視していなかったが、収益は静かに取りこぼされていたのです。担当者を責める話ではなく、要件と算定状況を突き合わせる仕組みがなかったことが原因でした。
改善方法
ステップ1:自施設が算定できる加算の一覧を作る
サービス種別・人員配置・体制をもとに、「自施設が要件を満たしている(満たせる)加算」の一覧を作ります。これが、算定状況と突き合わせるための基準になります。
ステップ2:算定できる加算と実際の算定を突き合わせる
一覧の加算が、実際に算定されているかを確認します。利用者ごとに算定できるはずの加算に抜けがないかも見ます。ここで初めて、数字に出ない取りこぼしが見えます。
ステップ3:漏れの起きやすいタイミングでチェックする
新規利用者の受け入れ時、要件を満たした時、報酬改定の時の3つは、特に漏れが起きやすい場面です。その都度、算定状況を確認する運用にしておきます。
ステップ4:改定のたびに取れる加算が増えていないか見る
報酬改定では、新設・緩和された加算のうち自施設が算定できるものがないかを確認します。改定を「対応すべき変更」だけでなく「取りこぼしを取り戻す機会」として捉えます。
関連サービス
月次経営レポートの構築支援では、自施設が算定できる加算の一覧化と、実際の算定状況との突き合わせを月次の管理に組み込み、数字に出ない取りこぼしを見える化します。新規受け入れや報酬改定のタイミングで算定漏れをチェックする運用を整えることで、本来受け取れるはずの収益を取りこぼさない状態を支援します。
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執筆者
萩原裕司
公認会計士・税理士