介護報酬改定は施設の収益・加算体系・人件費に直接影響します。改定前の準備と改定後の月次確認ポイントを、経営管理の観点から実務的に解説します。
介護報酬改定は「3年に一度の経営見直し機会」
介護報酬は3年ごとに改定されます。基本報酬の増減だけでなく、加算要件の変更・新設加算の追加・人員基準の見直しが同時に行われるため、事業者にとっては収益構造が変わるタイミングです。
「とりあえず様子を見る」という対応では、取れる加算を取り損ね、新しい単価での収支を把握できないまま経営判断を続けることになります。改定前から準備し、改定後の月次管理に素早く反映させることが重要です。
改定が経営に影響する3つのルート
基本報酬の増減
サービス種別ごとの基本報酬が変わります。報酬が上がれば収益増、下がれば収益減ですが、どちらの場合も「新しい単価で毎月いくら入ってくるか」を正確に把握することが出発点です。
加算の新設・廃止・要件変更
処遇改善加算・口腔・栄養・科学的介護などの加算は、改定のたびに見直されます。新設加算を見落とすと、本来取れた収入が恒常的に失われます。廃止・縮小される加算があれば収入が落ちます。
人員・設備基準の変更
新しい人員配置基準が設定されたり、ICTを活用した緩和措置が拡大されたりします。対応できれば配置の効率化につながりますが、未対応のまま放置すると基準違反になるリスクもあります。
改定後によくある経営上の問題
「報酬が変わったはずなのに試算表の変化がわからない」
試算表が翌月末にしか届かない環境では、改定後の新しい単価での収入が正確に反映されているか確認するのが遅れます。改定施行月の翌月には、加算請求額と基本報酬の変動を必ず確認することが必要です。
「取れる加算を知らないまま1年が過ぎた」
改定内容を十分に確認せず、従来の加算申請だけを続けているケースがあります。新設加算の届出は施行後一定期間内に行わなければならないことが多く、見逃すと当該年度の取得機会を失います。
「人件費率が計画と大きくずれている」
処遇改善加算の変更に伴い、職員への配分を見直す必要が生じます。加算収入の増減と人件費の増減をセットで月次管理しないと、人件費率の変化に気づくのが遅れます。
改定への対応:月次管理に落とし込む4ステップ
ステップ1:改定内容の把握と影響試算
改定内容が公表されたら(通常は施行の2〜3か月前)、自施設への影響を試算します。現在の利用者数・加算取得状況をベースに、新単価での月次収入を計算します。
ステップ2:取得できる新加算の洗い出しと届出
新設加算・要件が緩和された加算の中で、自施設が取得できるものを整理し、届出スケジュールを確認します。届出が必要なものは期限内に提出します。
ステップ3:改定施行月の月次確認
施行月(多くの場合4月)の翌月早期に、加算請求額・基本報酬額が正しく変更されているかを確認します。請求ソフトの単価設定ミスが残っているケースがあります。
ステップ4:改定後の予算を組み直す
新単価・新加算体系で改定後の予算を作成し直します。以降の月次管理は、新しい予算対比で確認することが重要です。
関連記事
よくある質問
関連サービス
執筆者
萩原裕司
公認会計士・税理士