介護施設の利益は、基本報酬だけでなく加算の取得状況で大きく変わります。加算の取りこぼしや要件未達は、そのまま利益の差として事業所ごとに表れます。加算管理が利益にどう影響するかを、事業別損益の視点から実務目線で整理します。
加算管理は「事業所ごとの利益を左右する収益要因」として見る
介護施設の利益は、基本報酬だけでなく加算の取得状況で大きく変わります。加算の取りこぼしや要件未達は、追加の費用を伴わずに収入だけを減らすため、そのまま利益の差として表れます。加算管理は、コンプライアンスの問題であると同時に、採算を左右する収益管理の一部です。
介護事業は労働集約型で人件費率が高く、利益はわずかな収入差で動きます。加算の収入は、すでに配置している人員や実施している取り組みが要件を満たしていれば、ほとんど追加費用なしに利益へ上乗せされます。だからこそ、加算を取れているかどうかが、同じ規模の事業所の利益を黒字にも赤字にも振り分けます。加算は「取れたら良い」ものではなく、利益に直結する経営数字です。
加算の取りこぼしそのもののリスクは介護施設の加算算定漏れのリスクとは?取りこぼしが利益を圧迫する理由で整理しています。本記事は、加算が事業所ごとの利益にどう効くかという損益の視点に絞ります。
なぜ加算管理が利益に直結するのか
加算の収入は、多くの場合、追加の費用をほとんど伴いません。費用は変わらず収入だけが増減するため、加算の差は利益にダイレクトに表れます。基本報酬が人員配置などでほぼ決まるのに対し、加算は取得の判断と管理しだいで動かせる収入です。
人件費率の高い介護事業では、利益率はもともと薄く、わずかな収入差で採算が変わります。そこに加算の取りこぼしが重なれば、要件を満たしているのに利益を逃すことになります。逆に、取れる加算をしっかり取得すれば、費用を増やさずに利益を厚くできます。加算管理を収益改善の手段として捉えられるかどうかが、利益の残る経営の分かれ目です。
よくある課題
加算を収益管理と切り離して見ている
加算を要件確認の問題としてだけ捉え、利益への影響として見ていないケースです。取りこぼしの重さに気づけません。
事業所別の利益と加算を結びつけていない
全体の利益しか見ておらず、どの事業所が加算を取りこぼして採算を落としているか把握できていないパターンです。
要件を満たせる取り組みを判断できていない
加算を取るために必要な取り組みを、利益への影響が見えないために前向きに検討できていないケースです。
実務で起きる問題
ある複数の事業所を運営する介護法人の例です。事業所ごとの規模や利用者数はほぼ同じなのに、利益率に差があることに経営者は気づいていましたが、原因がはっきりしませんでした。人件費率はどの事業所も似た水準で、稼働率にも大きな差はありませんでした。
そこで、事業所別の損益に加算の取得状況を並べて見たところ、利益率の低い事業所は、要件を満たせるはずの加算をいくつか算定していないことが分かりました。費用構造はほぼ同じなのに、加算の収入分だけ利益に差がついていたのです。算定状況を見える化し、取れる加算を届出したところ、費用を増やさずに利益率が改善しました。加算を事業所別の損益と結びつけて初めて、利益差の正体が加算の取りこぼしにあると分かったのです。事業所別の損益の見方は介護施設の部門別・サービス別損益管理とは?事業所ごとの採算を見る方法を参照してください。
改善方法
ステップ1:算定中の加算を見える化する
まず、どの加算を算定しているかを一覧で見える化します。算定状況が見えなければ、利益への影響も測れません。加算の見える化は介護施設の加算管理を見える化する方法|算定状況を毎月チェックできる仕組みで整理しています。
ステップ2:算定できるのにしていない加算を洗い出す
要件を満たしているのに算定していない加算を見つけます。費用を増やさずに取れる利益を特定する作業です。
ステップ3:事業所別に加算と利益を並べる
事業所ごとに、加算の取得状況と利益を並べて見ます。加算の差が採算にどう効いているかが見えてきます。
ステップ4:取れる加算を取得する判断をする
要件を満たせる取り組みを増やせば取れる加算は、利益への影響を踏まえて取得を判断します。費用と収入の両面で検討します。
ステップ5:毎月、加算と利益をあわせて確認する
加算の算定状況と事業所別の利益を月次で並べ、取りこぼしや要件未達が利益を削っていないかを定点で確認します。
関連サービス
事業別・部門別損益管理の支援では、事業所ごとの損益に加算の取得状況を並べ、加算の差が採算にどう効いているかを見える化します。要件を満たしているのに算定していない加算を洗い出し、費用を増やさずに取れる利益を特定します。加算は介護施設の利益を大きく左右するため、稼働率や人件費とあわせて加算を収益管理の一部として捉え、利益の残る事業所運営を支援します。
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執筆者
萩原裕司
公認会計士・税理士