訪問介護・通所介護・施設入居など複数のサービスを運営している法人では、全体の試算表だけでは「どのサービスが儲かっているか」が見えません。部門別損益管理の考え方と実務ステップを解説します。
全体の試算表だけでは経営判断できない
複数のサービスを運営している介護法人で、よくある状況があります。「全体では黒字なのに、なんとなく資金繰りが苦しい」——この感覚は、どこかのサービスが赤字を出しており、別のサービスがそれを補っているサインである場合があります。
全体の試算表しか見ていない状態では、どのサービスが利益を出しているか、どこに問題があるかを特定できません。部門別・サービス別に損益を把握することで、経営の「見えない部分」が見えてきます。
部門別損益管理が必要な典型的なケース
サービス別で採算が大きく異なる法人
訪問介護・通所介護・グループホームを同一法人で運営している場合、それぞれの採算は異なります。通所介護は稼働率依存・訪問介護は人件費依存・グループホームは固定費型と、コスト構造が違います。全体を合算した試算表だけでは、問題のあるサービスが見えません。
複数施設を運営している法人
同種サービスを複数拠点で運営している場合、拠点別の損益比較が重要です。「A拠点は黒字・B拠点は赤字」という状態を把握できていないと、B拠点への対策が後手になります。
新規サービスを開設した法人
新規サービスを開設した際、そのサービスが計画通りの収益を出しているかを確認するために、既存サービスと分離した損益把握が必要です。
部門別損益管理の設計ステップ
ステップ1:部門(サービス)の定義
どの単位で損益を分けるかを決めます。サービス種別別(訪問介護・通所介護・施設)、または拠点別(A施設・B施設)が一般的です。最初は大きな括りで始め、徐々に細かくしていきます。
ステップ2:収入の配分ルールを決める
介護報酬は請求ソフトにサービス別の実績が記録されているため、サービス別の収入は比較的明確に把握できます。自己負担・実費収入も同様にサービス別に集計します。
ステップ3:費用の配分ルールを決める
費用は「直接費」と「共通費」に分けます。
| 費用の種類 | 配分方法 | |---|---| | 直接人件費 | 各サービスに直接配分 | | 直接材料費・消耗品 | 各サービスに直接配分 | | 施設長・管理者の人件費 | 利用者数比または時間比で配分 | | 家賃・水光熱費 | 床面積比または利用者数比で配分 | | 事務費・その他共通費 | 売上比または利用者数比で配分 |
ステップ4:月次で確認する
配分ルールを決めたら、毎月同じ方法で集計します。前月比・前年同月比での変動を確認し、問題のあるサービスを早期に特定します。
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よくある質問
執筆者
萩原裕司
公認会計士・税理士