介護施設経営では人件費が最重要コストです。しかし、毎月確認されていないケースも少なくありません。利益が残る施設・残らない施設の違いを解説します。
人件費率は月次で確認すべき最重要指標のひとつ
介護施設の収益構造は、売上の大部分が人件費に費やされる「労働集約型」です。人件費率(人件費÷売上)を月次で把握していない施設は、利益が残らない構造に陥りやすい状態にあります。
ただし、「人件費を下げれば良い」わけではありません。採用難が続く介護業界で、サービス品質を維持しながら人件費率を適正に保つには、稼働率との関係を見ながら管理することが必要です。
介護施設の人件費率の目安
サービス種別によって異なりますが、一般的に以下が目安です。
| サービス種別 | 人件費率の目安 | |---|---| | 通所介護(デイサービス) | 60〜70% | | 訪問介護 | 70〜80% | | グループホーム | 60〜70% | | 介護付有料老人ホーム | 55〜65% |
この数値は施設の規模・加算取得状況・稼働率によって変動します。あくまで目安として、「前月比」「前年同月比」の変動を確認することの方が実務上は重要です。
利益が残らない施設の特徴
人件費率を毎月確認していない
月次の試算表は来ているが、人件費率を計算して確認していない施設があります。この状態では、人件費が収益に対して上昇していても気づくのが遅れます。
稼働率と切り離して管理している
稼働率が下がると売上が減りますが、人件費は変わりません。稼働率と人件費率をセットで見ていない施設では、「売上が下がったのに人件費は変わっていない」という状態が長く続くことがあります。
採用・退職のたびに確認していない
採用が増えた月は人件費率が上がります。この変動が稼働率の増減と対応しているかどうかを確認しないと、過剰採用または人員不足の状態が続く可能性があります。
よくある誤解
「人を減らせば人件費率が下がる」という誤解
人員を削減すれば一時的に人件費率は下がりますが、サービス提供体制が崩れ、稼働率や加算要件に影響が出ます。人件費率を下げるには、稼働率を上げる(分母を増やす)か、適正な人員配置を維持するかが基本です。
「加算があるから人件費率は高くても良い」という誤解
処遇改善加算などは人件費の原資になりますが、加算込みの売上に対して人件費率が過大になっている施設もあります。加算の取得状況と人件費の関係は、月次で確認する必要があります。
月次管理の改善ステップ
ステップ1:毎月人件費率を計算する習慣をつくる
試算表が届いたら、必ず「人件費÷売上」を計算します。前月との比較だけでも、変動を早く把握できます。
ステップ2:稼働率と並べて確認する
稼働率と人件費率を同じ資料に載せることで、「稼働率が下がったが人件費率は上がっていないか」「稼働率が上がったのに人件費率も上昇していないか」を確認できます。
ステップ3:採用・退職時のタイミングで確認する
職員が増えた月・退職した月は翌月の人件費率の変動を確認します。新規採用が稼働率の増加に対応しているかどうかを確認することで、適正な人員配置の判断ができます。
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執筆者
萩原裕司
公認会計士・税理士