介護施設経営では「稼働率」が重要と言われますが、実際にはどのように管理すべきなのでしょうか。利益が出る施設と苦戦する施設の違いを、月次管理・人件費・経営判断の観点から解説します。
稼働率は介護施設経営の最重要指標のひとつ
稼働率の管理ができていない介護施設は、利益が出にくい構造になっています。
ただし、「稼働率が高ければ良い」というわけではありません。人件費・加算・入退去管理と連動させて月次で把握することが必要です。稼働率だけを追っても、人件費が膨らんでいれば利益は残りません。
なぜ稼働率が経営に直結するのか
介護施設は固定費型のビジネスです。家賃・人件費・光熱費といった固定費は、利用者が少なくてもかかり続けます。一方で収入は利用者数に比例するため、稼働率が数パーセント変わるだけで利益額が大きく変動します。
例として、定員30名のデイサービスで考えてみます。
| 稼働率 | 月間延べ利用者数(目安) | 月次売上への影響 | |---|---|---| | 95% | 約570名日 | 基準 | | 85% | 約510名日 | 約30万円減 | | 75% | 約450名日 | 約60万円減 |
稼働率が95%から75%に落ちると、月次の売上差は約60万円になります。固定費が変わらない中でこの差は、利益に直接響きます。
加えて、介護報酬の入金は約2か月後です。稼働率が低下しても、その影響が試算表に現れるのは先のこと。「気づいた時には資金が苦しくなっていた」というパターンが起きやすい構造です。
利益が出る施設・出ない施設の違い
利益が出る施設に共通すること
- 稼働率・入退去状況を毎月数値で確認している
- 空床の発生を月次で把握し、営業・相談員と情報共有している
- 人件費率と稼働率を並べて確認している
- 試算表が翌月15日前後に届き、経営判断に使えている
利益が出にくい施設に共通すること
- 稼働率を「感覚」で把握しており、数値で確認していない
- 月次の管理資料がなく、試算表しかない
- 試算表が翌月末にしか届かず、問題に気づくのが1か月遅れる
- 加算取得状況や人件費の動きを別々に管理しており、連動できていない
現場でよくあるケース
あるデイサービスでは、稼働率が落ちていることに気づいたのが「翌々月の試算表を見てから」でした。入退去の状況は現場で把握していましたが、数値化・報告のフローがなく、経営者まで情報が届いていなかったのです。
その間も人件費は変わらず発生しており、資金繰りへの影響が出始めてから対応を始めることになりました。
このケースでは、月次で稼働率・人件費率・資金繰りを確認するフローを整備し、翌月15日に数値を報告する体制に変えました。それ以降は稼働率の変化に早期に気づけるようになり、相談員への情報共有も月次で行えるようになりました。
稼働率管理の改善ステップ
ステップ1:月次で数値を確認するフローをつくる
毎月何日に誰が稼働率を集計・報告するかを決めます。エクセルや既存の請求ソフトのデータを使えば、月次での集計は大きな手間はかかりません。
ステップ2:人件費率と並べて確認する
稼働率だけを見ても不十分です。人件費率(人件費÷売上)と並べて確認することで、「稼働率は高いが人件費も多い」「稼働率が落ちたが人件費は変わっていない」という状態を早期に把握できます。
ステップ3:試算表を早く届ける体制を整える
稼働率の変化に早く気づくには、月次の試算表が翌月10〜15日に届く体制が必要です。記帳頻度を上げ、クラウド会計を活用することで実現できます。
関連記事
よくある質問
関連サービス
執筆者
萩原裕司
公認会計士・税理士