介護報酬は、サービス提供月の約2か月後に入金されます。この入金の遅れが、利益が出ていても資金が苦しくなる最大の理由です。介護報酬の入金サイクルの仕組みと、2か月のズレを前提にした資金繰りの考え方を解説します。
介護報酬は「2か月後」に入ってくる
介護施設の資金繰りを理解するうえで、まず押さえるべきは入金サイクルです。介護報酬は、サービスを提供した月の約2か月後に入金されます。
流れはこうです。4月にサービスを提供した分は、5月10日までに国保連(国民健康保険団体連合会)へ請求します。そして、その請求が審査され、入金されるのは6月下旬です。つまり、サービス提供から実際の入金まで、約2か月のタイムラグがあります。
この2か月のズレが、介護施設で「利益は出ているのに資金が苦しい」という状態が起きる最大の理由です。
なぜ利益と資金がズレるのか
損益計算書は、サービスを提供した月に売上を計上します。4月にサービスを提供すれば、4月の売上として利益が計算されます。しかし、その現金が実際に手元に入るのは6月下旬です。
一方で、費用は待ってくれません。職員への給与は当月または翌月に支払い、家賃や水光熱費も毎月出ていきます。売上は2か月遅れて入金され、費用は毎月先に出ていく——この構造が、利益と資金のズレを生みます。
だからこそ、介護施設では損益計算書だけを見ていては資金繰りを管理できません。利益と資金は別物として、それぞれ確認する必要があります。
入金サイクルが特に効いてくる場面
開設直後
開設から数か月は、最も資金繰りが厳しい時期です。理由は2つ重なります。
- 稼働率が低く、売上そのものが小さい
- それでも人件費は最初からほぼフルでかかる
さらに、最初の介護報酬が入金されるのは開設から約2か月後です。つまり、開設から最初の入金までの期間は、ほぼ支出だけが続きます。この期間を乗り切る運転資金を開設前に確保していないと、黒字化が見えていても資金が尽きてしまいます。
急な増員・新規サービス開始
職員を増やしたり、新しいサービスを始めたりすると、人件費は即座に増えます。しかし、それに対応する介護報酬の入金は2か月後です。拡大のタイミングほど、入金サイクルのズレが資金を圧迫します。
返戻・査定があったとき
請求に不備があると返戻となり、入金が翌月以降にずれ込みます。査定で減額されることもあります。予定していた入金が入らないと、資金計画が崩れます。返戻・査定は一定割合で起きるものとして、資金繰りに余裕を見込んでおく必要があります。
2か月のズレを前提に資金を管理する
入金サイクルは制度で決まっており、変えられません。だからこそ、そのズレを前提に資金繰りを設計することが現実的な対策になります。
数か月先までの資金繰り表を作る
介護報酬の入金は約2か月後と決まっているため、資金繰り表に織り込めば、数か月先の資金残高をかなりの精度で予測できます。入金(介護報酬・自己負担・実費)と支出(人件費・家賃・返済)を月単位で並べ、どの月に資金が薄くなるかを事前に把握します。
運転資金の目安を持つ
少なくとも2〜3か月分の固定費(人件費・家賃など)を手元資金または借入枠として確保しておくと、入金のズレや返戻があっても対応できます。
拡大の前に資金を確認する
増員や新規サービスの前には、人件費の先行と入金の遅れを資金繰り表でシミュレーションします。「採算は合うが、その前に資金が持つか」を必ず確認します。
具体例:黒字なのに6月に資金が薄くなる施設
ある住宅型有料老人ホームが、4月に職員を増員したとします。増員分の人件費は4月・5月とすぐに出ていきますが、それに見合う稼働率上昇分の介護報酬が入金されるのは6月下旬以降です。損益計算書上は4月から黒字でも、手元資金は5〜6月に最も薄くなります。資金繰り表を作っていれば、この谷を3月の時点で予測でき、借入枠の確保などを前もって準備できます。資金不足は、起きてから対応するのではなく、入金サイクルから逆算して予測するものです。
関連サービス
介護報酬の入金サイクルを織り込んだ資金繰り表の作成と、数か月先の資金見通しの管理を支援しています。開設時の資金計画から、拡大時のシミュレーションまで対応します。
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よくある質問
執筆者
萩原裕司
公認会計士・税理士