介護施設開設時は物件・採用・指定申請に意識が向きがちですが、実際には「開設後の管理体制」が重要です。開設後に苦労する施設の共通点を解説します。
開設後に苦労する施設の共通点
介護施設の開設では、物件の確保・採用・指定申請に時間と労力がかかります。それは当然のことですが、問題は「開設してから経営管理の問題に直面する」施設が多いことです。
開設前に管理体制を整えておかなかった施設ほど、開設後半年以内に経理・資金繰り・月次管理の課題が出やすくなります。
開設時によくある課題
経理・管理が後回しになる
開設前は現場準備・採用・指定申請に追われます。経理フローやクラウド会計の設定、月次の締め方などは「開設してから考えよう」となりがちです。
その結果、開設後しばらくは記帳が滞ったり、試算表が2〜3か月遅れたりする状態が続きます。
資金繰りの見通しが立っていない
開設直後は支出が先行します。物品購入・人件費の先払い・指定申請費用が重なる一方で、介護報酬の入金は約2か月後からです。「売上が立っているのにお金が足りない」という状態になりやすいのが開設直後の特徴です。
資金繰り表を作っていない施設では、現預金残高を見ながら支払いをする、という対応になりがちです。
稼働率管理のフローがない
開設直後は稼働率が低い状態からスタートします。入居・利用者獲得を進めながら稼働率を上げていく時期ですが、数値で確認するフローがないと「感覚」で経営することになります。
開設後に起きやすい問題
- 試算表が遅れ、資金ショートのリスクに気づくのが遅れる
- 稼働率の実態が見えず、入居・利用者獲得の打ち手が後手になる
- 人件費が収益に対して過大になっていても気づかない
- 加算管理が属人化し、担当者が変わると状況がわからなくなる
- 銀行への試算表提出が遅れ、融資相談のタイミングを逃す
なぜ開設前の管理体制準備が必要なのか
開設後に問題が出てから対処すると、余裕がない状態での整備になります。現場が忙しい中で経理フローを変えたり、会計ソフトを導入したりするのは負荷が高く、中途半端になりがちです。
一方で、開設前に会計・経理フローを設計し、クラウド会計を設定しておけば、開設初月から月次管理を回すことができます。
銀行との関係でも、早い段階から試算表・資金繰り表を提出できる施設と、数か月後にようやく提出できる施設では、信頼の積み上がり方が変わります。
開設前に準備すべきこと
会計・経理フローの設計
記帳担当者・頻度・クラウド会計の設定を開設前に決めておきます。freee・マネーフォワードであれば、法人口座と連携させることで記帳の大部分が自動化できます。
月次締めスケジュールの設定
毎月何日に試算表を完成させるか、事前に決めておきます。翌月15日を目標に、給与計算・社会保険料の仕訳・介護報酬の未収金処理のタイミングを逆算して設定します。
資金繰り表の初期作成
開設前に向こう6か月の資金繰り計画を作成します。介護報酬の入金タイムラグを反映し、支出と入金のギャップを把握しておくことで、開設直後の資金繰りを見通しながら経営できます。
管理指標の決定
月次で何の数値を確認するかを事前に決めておきます。稼働率・人件費率・加算取得状況の3点を毎月確認するだけでも、経営の把握度が大きく変わります。
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執筆者
萩原裕司
公認会計士・税理士