月次決算・経営改善

試算表が2〜3か月遅れている会社で起きやすい問題とは?

試算表が2〜3か月遅れている会社では、「過去の数字で今を判断している」状態が常態化しています。経営判断の遅れ・資金繰り悪化・問題の見落としなど、遅れが引き起こす実務上のリスクを具体的に解説します。

結論:試算表が2〜3か月遅れている会社は「過去の数字で今を動かしている」

試算表が2〜3か月遅れている場合、経営者が今見ている数字は2〜3か月前の状態です。

4月末締めで5月末に税理士から試算表が届く会社では、5月の経営判断に使える最新の数字は「3月末の状態」です。4月・5月の問題は全く見えていません。

これは、今月の天気を先月の天気予報で判断しているようなものです。


問題1:経営判断が「感覚ベース」になる

月次の試算表がない状態では、次のような判断が「感覚」に依存します。

  • 採用をするかどうか
  • 設備投資のタイミング
  • 仕入れ量の調整
  • 借入返済のペース

「先月の売上が良かった気がするから今月も採用しよう」という判断をしても、実際の利益が出ているかどうかは試算表を見なければ分かりません。

特に売上は上がっているのに経費も一緒に上がっていて利益が減っているケースは、試算表がないと見えません。経営者の感覚では「売上が上がった」という印象しか残らないためです。


問題2:資金繰りの問題が「突然」表面化する

試算表の遅れは資金繰り管理の遅れに直結します。

3か月前の試算表では、今月の資金残高を推計することが難しくなります。売掛金・未払い・在庫などの状態が最新のものではないため、資金繰り表を作っても精度が出ません。

実務でよくあるのが、「税金の納付時期に資金が足りなくなった」というケースです。消費税・法人税の中間納付・社会保険料の増加など、定期的な大きな支払いが迫っても、手元の数字が不正確だと事前の資金確保が難しくなります。

資金不足が分かるのが支払い直前では、対応できる選択肢がほぼありません。


問題3:問題の発覚が遅れ、損失が積み上がる

試算表の遅れが最も深刻な影響を与えるのが、問題の発見タイミングです。

たとえば経費が毎月じわじわ増えているケースを考えます。前月比2〜3%の増加は金額が小さいため、試算表なしでは気づきにくいです。これが3か月後に試算表として届いたとき、累計では10%近い経費増になっていることがあります。

売上高が安定していれば利益は減少しているはずですが、試算表がなければその変化は見えません。3か月分の損失が確定してから「どこで増えたか」を調べる、という後追いの作業になります。

問題を発見した時点ですでに「取り返せない損失」が積み上がっているケースは、月次管理がない会社で頻繁に起きます。


問題4:経理が属人化していて誰も全体を把握していない

試算表の遅れには「経理担当者しか状況を把握していない」という属人化の問題が伴うことが多いです。

担当者が1人で経理を抱えており、いつ何の処理をするかのルールが頭の中だけにある状態です。この場合、担当者が体調不良や退職で業務を離れると、月次処理が止まります。

こういった会社では「前任者から引き継いで以来、月次のやり方がよく分からない」という経理担当者が、なんとか動かしているケースもあります。処理に時間がかかるのは、ルールが整備されていないためです。


経営者が数字を見る習慣を作ることが出発点

試算表を早くする取り組みを始めるとき、最初のステップは「経営者が毎月数字を見る習慣」を意識的に作ることです。

どんなに早く試算表ができても、経営者が見なければ意味がありません。「毎月15日に税理士から試算表が届いたら、その週中に確認する」というルールを自分で作ることが重要です。

確認する項目はシンプルで構いません。

  • 売上は前月比でどうか
  • 利益は計画に対してどうか
  • 資金残高はどのくらいあるか
  • 前月と比べて大きく変わった経費はあるか

この4点を月次で確認するだけでも、感覚経営からの脱却が始まります。


月次フローの見直しでできること

試算表の早期化は、大きな投資なしに取り組めます。

1. 経費精算の締め切りを月末から25日に変更する これだけで月末以降の処理集中が解消されます。

2. クラウド会計の銀行・カード連携を設定する 入力作業が大幅に減り、担当者の処理時間が短縮されます。

3. 税理士との提出スケジュールを変更する 「翌月10日提出・翌月15日完成」を目標に合意します。対応できない場合は、早期化対応の税理士への変更も検討に値します。

4. 月末前に固定費の仕訳を処理する 家賃・リース料など毎月変わらない経費は月末前に処理するルールを作ります。月末に変動費の確認だけが残る状態にするのが目標です。


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よくある質問

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執筆者

萩原裕司

公認会計士・税理士