介護経営

デイサービスの損益管理|利用率と人件費で決まる収益構造の見方

デイサービスは入所系と違い、日々の利用率が収益を大きく左右します。送迎・配置基準・加算といったデイ特有のコスト構造を踏まえ、どの数字を月次で見れば赤字事業所を早く見つけられるかを、実務目線で整理します。

デイサービスの損益は「利用率」と「人件費率」で決まる

デイサービス(通所介護)の損益管理で、まず押さえるべき結論はシンプルです。売上は日々の利用率でほぼ決まり、コストの大半は人件費——この2つのバランスが取れているかを月次で見ることが、損益管理の出発点になります。

入所系の施設は一度入居すれば一定期間の収入が見込めますが、デイサービスは利用者が毎日通ってくる前提の事業です。利用人数が日によって変動し、その変動がそのまま売上に響きます。一方で、人員配置・送迎・場所といったコストは固定的で、利用人数が少ない日でも簡単には減らせません。売上は変動、コストは固定——この構造を理解しているかどうかで、損益管理の精度が変わります。

部門別・事業所別に損益を分けて見る考え方の全体像は部門別・サービス別損益管理で整理しています。本記事は、その中でもデイサービスに特有の収益構造に絞って見ていきます。

なぜデイサービスは損益管理が難しいのか

デイサービスが赤字になりやすいのは、コスト構造が固定費型だからです。定員18名のデイで、ある日の利用が10名だったとしても、職員数も送迎車も場所も変わりません。利用率が下がった分は、ほぼそのまま利益の減少になるのです。

さらに、利用率は曜日や季節で変動します。月曜は埋まるが金曜は空く、夏場は通うが冬場は控える、といった波があります。月の平均利用率が損益分岐点を上回っていても、特定の曜日だけ慢性的に空いていれば、そこは赤字を垂れ流していることになります。日次・曜日別で見ないと気づけない問題です。

よくある課題

法人全体の数字でしか見ていない

複数のデイサービスや他のサービスと合算した数字だけを見ていると、好調な事業所が不調な事業所を覆い隠します。「全体では黒字だから」と安心しているうちに、特定の事業所が沈み続けているケースは珍しくありません。

利用率を「だいたい埋まっている」で済ませている

定員に対する平均利用人数を数字で把握せず、感覚で「まあまあ」と捉えている施設があります。利用率が損益分岐点に対してどの位置にあるかを知らないと、人員配置が過剰か適正かも判断できません。

送迎コストを固定費として見ていない

送迎は「やって当たり前」のものとして、損益の項目から意識が外れがちです。しかし送迎には人件費・車両費・燃料費がかかり、利用率が低いほど1人あたりの負担が重くなります。

実務で起きる問題

3か所のデイサービスを運営する法人の例です。月次の試算表は法人全体でしか作っておらず、事業所別の損益は見ていませんでした。全体では黒字だったため、特に問題視していませんでした。

事業所別に損益を分けて見たところ、2か所は黒字、1か所は慢性的な赤字であることが判明。赤字の事業所は平均利用率が定員の6割にとどまっていたにもかかわらず、人員配置は開設当初のまま厚く維持されていました。全体黒字に隠れて、1事業所の赤字が放置されていたのです。

さらに曜日別に見ると、その事業所は金曜の利用が極端に少なく、それでも金曜も通常どおり職員を配置し送迎を回していました。曜日別の見直しと人員配置の調整で、赤字幅は大きく縮小しました。

改善方法

ステップ1:事業所別に損益を分ける

複数事業所を運営しているなら、まず事業所ごとに売上・人件費・送迎費・固定費を分けて損益を出します。どこが稼ぎ、どこが沈んでいるかを見えるようにすることが最初の一歩です。

ステップ2:利用率を損益分岐点と並べて見る

定員に対する平均利用率を月次で把握し、「何名通えば黒字か」という損益分岐点の利用率と並べます。今の利用率が分岐点の上か下かが、すべての判断の基準になります。

ステップ3:曜日別・日別で空きを見つける

月平均だけでなく、曜日別の利用率を見ます。慢性的に空く曜日があれば、その曜日の人員配置・送迎・営業を見直す対象になります。

ステップ4:利用率と人員配置をセットで調整する

利用率に対して人員配置が過剰なら、配置やシフトを調整します。逆に利用率を上げる余地があるなら、営業やケアマネとの連携を強化します。人件費率は「下げる」のではなく、利用率とのバランスで「適正化」する視点が大切です。

関連サービス

事業別・部門別損益管理の支援では、複数のデイサービスや併設サービスを事業所ごとに分けて損益を見える化し、利用率・人件費率・送迎コストを月次で確認できる形を整えます。全体黒字に隠れた赤字事業所を早く見つけ、人員配置と利用率のバランスを数字で判断できる状態を支援します。

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よくある質問

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執筆者

萩原裕司

公認会計士・税理士