介護経営

介護施設が月次で必ず見るべき数字|毎月チェックする項目の選び方

試算表が届いても、何を見れば経営判断に使えるか分からない——介護施設が毎月確認すべき数字は実はそれほど多くありません。稼働率・人件費率・資金残高を中心に、月次でチェックする項目とその見方を整理します。

毎月見るべき数字は、実は多くない

「試算表は毎月届くが、どこを見れば経営判断に使えるのか分からない」——介護施設の経営者から、よく聞く声です。試算表には数十の勘定科目が並びますが、経営判断のために毎月確認すべき数字は、実はそれほど多くありません。

結論から言えば、最低限見るべきは稼働率・人件費率・営業利益・資金残高の4つです。稼働率は売上の源泉、人件費率は費用の中心、営業利益はその結果、資金残高は資金繰りの安全度を示します。この4つを毎月同じ形で並べ、推移を追うことから始めます。

なぜ「絞る」ことが大事なのか

月次で見る項目は、多いほど良いわけではありません。むしろ、項目を増やしすぎると毎月の確認が形だけの作業になり、肝心の判断に使われなくなります。

数字を経営に使えている施設と使えていない施設の違いは、項目の多さではなく「毎月同じ数字を、同じ形で、前月と比べて見ているか」にあります。少ない項目でも、推移を追えば変化の方向が見えます。逆に、20項目を並べても、単月で眺めるだけでは何も判断できません。

月次で見るべき数字の中身

1. 稼働率

介護施設の売上の大半は稼働率で決まります。稼働率が1〜2ポイント下がるだけで、固定費は変わらないため利益が大きく削られます。定員に対する利用実績の比率を、施設別・サービス別に毎月確認します。

2. 人件費率

費用の中心は人件費です。給与手当だけでなく、法定福利費・派遣費用を含めた実質人件費を、売上に対する比率で見ます。人件費率が上がっていれば、稼働率の低下か、人員配置の過剰か、派遣依存の進行のいずれかが起きています。

3. 営業利益

稼働率と人件費率の動きを見たうえで、結果としての営業利益を確認します。前月比・予算比で増減の理由が説明できる状態になっているのが理想です。

4. 資金残高

介護報酬は入金が約2か月後のため、利益が出ていても資金が先に出ていきます。月末の現預金残高と、数か月先の資金見通しを確認します。黒字でも資金残高が細っていれば、早めに手を打つ必要があります。

慣れてきたら加える項目

上記4つに慣れてきたら、次の項目を加えます。

  • 加算の取得状況(取得漏れ・算定要件の維持)
  • 部門別・サービス別の損益(複数サービス運営の場合)
  • 要介護度別の利用者構成(収入単価に影響)

よくあるつまずき

項目を一気に増やしてしまう

「あれもこれも見なければ」と20項目以上の資料を作り、結局毎月見きれずに形骸化するケースです。最初は4〜5項目に絞ります。

単月でしか見ていない

今月の稼働率が90%という数字だけでは、良いのか悪いのか判断できません。先月91%、先々月92%と下がってきているなら、それは見過ごせないサインです。必ず推移で見ます。

経理が数字を出して終わりにしている

数字を揃えること自体が目的になり、経営者や現場と共有して対策を話す場がない施設は少なくありません。月次の数字は、経営会議など「判断する場」につないではじめて価値が出ます。

具体例:同じ稼働率でも判断が分かれる

2つの施設がどちらも今月の稼働率92%だったとします。X施設は3か月連続で92%前後を維持。Y施設は95%→93%→92%と下降中。単月の数字は同じでも、Y施設は下げ止まりの原因(退去の増加か、新規入居の停滞か)を今月のうちに確認すべき状態です。月次の数字は、単月の良し悪しではなく「どちらに向かっているか」を読むためのものです。

早く見ることが価値を決める

どれだけ良い項目を選んでも、試算表が2〜3か月遅れていては手遅れになります。翌月10日前後にその月の数字を確認できる状態を作ることが、月次管理の前提です。早期化の進め方は、別記事で解説しています。

関連サービス

毎月見るべき数字を施設の実態に合わせて選び、経営判断に使える月次レポートとして整える支援を行っています。試算表を「届くだけの資料」から「判断に使える資料」に変えます。

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よくある質問

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執筆者

萩原裕司

公認会計士・税理士