介護施設は人員配置基準を満たす必要がある一方、人件費が利益を圧迫しやすい構造です。配置を守りながら利益を残すには、稼働率と人員のバランスを数字で見ることが欠かせません。介護施設の人員配置と人件費のバランスの取り方を実務目線で整理します。
人員配置と人件費は「稼働率とセットで数字を見て」バランスを取る
介護施設で人員配置と人件費のバランスを取る要点は、配置基準を守りながら、稼働率と人件費率をセットで見て、収入と人員の釣り合いを確認することです。人件費は介護施設の利益を最も大きく動かす費用であり、配置を手厚くすれば増え、減らしすぎれば基準を割ります。感覚ではなく数字でバランスを判断することが欠かせません。
介護事業は労働集約型で、費用の大半が人件費です。そのため人件費率の数ポイントの差が、そのまま利益を左右します。しかも人員はサービスの質と配置基準を保つため、稼働率が下がっても簡単には減らせません。配置と収入のバランスが崩れると、すぐに利益に表れます。だからこそ、人件費を稼働率と並べて見ることが、バランスを取る出発点になります。
人件費管理の基本的な視点は介護施設の人件費管理で重要な3つの視点とは?利益を左右する人件費の見方で整理しています。本記事は、人員配置と人件費のバランスをどう数字で取るかに絞ります。
なぜ人員配置と人件費のバランスが重要なのか
介護施設では、人員配置基準を満たすことが大前提です。そのうえで利益を残すには、基準を守りながら人件費を適正な水準に保つ必要があります。配置は質と法令順守に関わり、人件費は利益に関わるため、どちらか一方だけを優先すると経営が崩れます。
人件費だけを見て削れば配置基準を割り、サービスの質が下がります。配置だけを優先して手厚くすれば、人件費が利益を食いつぶします。両者は本来トレードオフであり、その釣り合いをどこに置くかが経営判断です。この判断を毎月の数字に基づいて行えるかどうかが、利益の残る介護施設とそうでない施設を分けます。
よくある課題
全体の人件費しか見ていない
施設全体の人件費だけを見て、事業所別・サービス別に分けていないケースです。どこでバランスが崩れているか分かりません。
稼働率と切り離して人件費を見ている
人件費率だけを追い、稼働率と並べて見ていないパターンです。稼働率が下がって人件費率が悪化していても、原因に気づけません。
配置を見直す基準がない
人員配置を感覚で決めており、何をもって過剰・不足とするかの基準がないケースです。見直しの判断ができません。
実務で起きる問題
ある複数のデイサービスを運営する事業者の例です。全体では黒字でしたが、利益が伸び悩んでいました。人件費は施設全体でしか見ておらず、どの事業所で配置と収入のバランスが崩れているかは把握できていませんでした。経営者は「人手は足りないくらいだ」と感じており、配置を減らす発想はありませんでした。
そこで、事業所ごとに稼働率と人件費率を並べて見たところ、ある事業所だけ稼働率が低いのに人員配置が他と同じで、人件費率が大きく悪化していることが分かりました。利用者数に対して送迎や時間帯の人員が過剰になっていたのです。シフトを見直して配置を稼働の実態に合わせたところ、サービスの質を落とさずに人件費率が改善しました。全体の数字では見えなかったバランスの崩れが、事業所別に分けた瞬間にはっきり見えたのです。事業所別の損益を見る意義は介護施設の部門別・サービス別損益管理とは?事業所ごとの採算を見る方法も参照してください。
改善方法
ステップ1:事業所別・サービス別に人件費率と稼働率を並べる
全体ではなく、事業所やサービスごとに人件費率と稼働率を並べて見ます。バランスの崩れている場所を特定するためです。
ステップ2:配置基準を満たす最低人員を把握する
各事業所で配置基準を満たすために必要な最低人員を押さえます。ここが、削ってはいけない下限になります。
ステップ3:稼働率に対して人員が過剰・不足の場所を見つける
稼働率が低いのに人員が多い、逆に高稼働なのに人手が足りない、といった場所を見つけます。数字でバランスのズレを捉えます。
ステップ4:シフト・時間帯の偏りを見直す
人員の総数だけでなく、時間帯ごとの配置の偏りを見直します。配置基準を守りながら、稼働の実態に合わせて調整します。
ステップ5:毎月の月次管理で定点観測する
人件費率と稼働率を毎月並べて確認し、バランスの変化を定点で追います。人件費率の目安は介護施設の人件費率はどれくらいが理想?適正水準の考え方を参照してください。
関連サービス
事業別・部門別損益管理の支援では、事業所ごと・サービスごとに人件費率と稼働率を並べて見える化し、配置と収入のバランスが崩れている場所を特定します。配置基準を満たす最低人員を踏まえたうえで、稼働の実態に合わない過剰・不足を数字で捉え、シフトや時間帯の見直しにつなげます。人件費は介護施設の利益を最も大きく動かす費用のため、毎月の定点観測で利益を残せる配置を支援します。
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執筆者
萩原裕司
公認会計士・税理士